著者:公庄博オフィスーT阿部奈々美頁数:328ページ◆内容概略「飛流 直下 三千尺」と歌われる廬山の三畳泉はわずか155メートル。それを三千尺(一尺は約30.3センチだから9千メートル)と李白は大仰に表現する。しかし凡人が見れば落差155メートルの滝に過ぎないが、李白が見れば三千尺の瀑布となる。だがこれは決して誇張表現ではなく、9000メートルの上空から地上に落ちてくる銀河のように李白は見えたのだろう。中国を代表する詩人である杜甫と李白には大きな違いがある。杜甫には誠実という素晴らしさが有るが、詩と人生のスケールの大きさは李白に譲るだろう。李白は西域に生まれて四川で育ち、若い頃から詩人としての名声は絶大であった。そして仙人になることを求めて各地を漫遊する。その旅は放浪と言う言葉は合わず、豪華な旅だったと思わせる。常に貧窮の印象がつきまとう杜甫に対して李白には豊さが漂う。「千金は散じ尽くすも 還た復た来たらん」(将進酒)というように金に困るそぶりはない。そこで李白には金持ちの貿易商人の息子と思われた。詩も人生も自由奔放であった李白には天上界から追放された「謫仙人」と呼ばれ、杜甫の詩聖に対して詩仙と称される。李白の詩は約千首に及ぶ、本書はこのすべての詩の訳注を記すことを目的としている。